
私たちのお口の中には、400種類を超える細菌が存在しています。 歯周病の原因になっている細菌、これらは口の中の病気だけを引き起こすものと考えられてきました。
歯周病菌は、炎症を引き起こす物質を生み出します。そしてこれらの物質、また一部の細菌は血管の中に入り体内をめぐり、全身の各器官に広がります。
最近ではそれらの物質や器官に直接到達した一部の細菌が、体の病気に悪影響を与える可能性があるということがわかってきました。
歯周病の治療をせずにすごしていると、その間ずっと全身の健康を損なうリスクを体の中に温存し続けることになります。
これらの病気から体を守るためにも、歯垢や歯石を取り除き、健康な状態を維持すること=プラークコントロールが大切になります。

歯周病と糖尿病は、特に相互に発症や進行に関わりがあるといわれています。
歯周病菌が増えると、それに伴って病原菌の成分が血液中に流れ込みます。
流れ込んだ成分は、生体の細胞を刺激していろいろな活性物質を作り出します。
このことが全身にいろいろな効果を及ぼしています。
その活性物質のうちの一つ、TNFαという物質は糖尿病にもかかわっていると考えられています。
血液中の糖の濃度(血糖値)をコントロールするホルモンをインシュリンといいますが、血管中の歯周病菌の成分TNF αが血糖値をコントロールするインシュリンの働きを弱め、血糖値を下げる反応を阻害していることがわかってきました。
糖尿病になると、体の免疫力を低下させるため、歯周病菌への抵抗力も低下させています。
細胞がインシュリンに対して反応しづらくなっているタイプの糖尿病では、歯周病の治療により歯周炎がおさまると、血中のTNFαが減少し、血糖値が安定しやすくなることが示されています。

歯周病菌が存在すると、歯肉からの出血があったり、膿が出てお口の中で様々な細菌が繁殖しやすい環境になっています。
歯周病菌を含んだ唾液が気づかないうちに気道を通って気管支や肺に入り、細菌がそこで繁殖して肺炎を引き起こす、ということがあります(誤嚥性肺炎)
年齢に伴い嚥下反射や、気管支を守る働きが低下するため、ご高齢の方は特に肺炎にかかる危険性が高くなります。
お口の中の細菌をできるだけ減少させるための口腔ケアが必要です。

これまで、動脈硬化や冠動脈の疾患は喫煙・糖尿病・高脂血症などから引き起こされると考えられていました。
実際にこれらの疾患が原因または症状を促進させていますが、これらの危険因子とは無関係な人でも発症することから、何か別の因子の存在が予想されてきました。
その一つとして歯周病との関連も示唆されています。
歯周病菌の一種が血液中に入り込んで動脈壁に付着し、その作用で血小板がかたまって小さな塊を作った後、それがはがれて血流中に入り、心冠動脈に詰まってしまうことも考えられています。
高齢の方や、お体の不自由な方のように、感染症に対する抵抗力が落ちている方は特に注意が必要になります。

歯周ポケット内で増殖した細菌は、歯肉から血液中に入り全身に広がることがありますが、ほとんどの場合は体の防御システムにより排除されてしまいます。
しかし、心臓の弁に障害のある方、また人工弁を入れておられる方では、弁の周りの血液の流れがスムーズではなく、滞っている場合があります。
この部分に体の防御システムから逃れてきた細菌が侵入し、心臓の内膜に住み着いて増殖してしまいます。
この菌によって心内膜が炎症をおこし、心内膜炎を引き起こすのです。
お口の中では、心内膜炎を引き起こすとされている菌が、プラーク中にいる細菌が報告されています。
特に重度歯周病の方の歯周ポケットには悪性度の強い歯周病菌が多く存在します。
徹底したプラークコントロール(歯磨き、舌苔(舌の汚れ)をしっかり落とす)等を意識して行うことが重要になってきます。